沖縄の「ソーキそば」と本土の「蕎麦」、まず歴史からして違うのだ!!

今や日本のどこででも食べられるようになった沖縄料理。その代表選手と言えば沖縄そばだ。でも、沖縄そばは蕎麦を名乗るにしちゃあ違い過ぎる。本当にあれを「そば」と呼んでいいのか、誰もが一度は疑問に思うであろう「沖縄そば問題」に切り込んでみた!

沖縄そばの原型は中国由来の宮廷料理

そばのことならば、その道のプロに話を聞かねばなるまい。というわけで沖縄生麺協同組合の砂川純宣(あつのり)さんに話を聞こう。「沖縄ではそばと言えば、昔から『沖縄そば』のことです。日本の蕎麦は『日本そば』とか『やまとのそば』と呼んで区別します」と砂川さん。

やっぱりそうか。「そもそも沖縄そばの麺は100パーセント小麦粉。対して日本の蕎麦はそば粉が主体なので別物なんですよ」。砂川さんによれば、沖縄そばのルーツは中国にあるという。

文献で初めて確認されているのは1534年、琉球王朝第二尚王統三代王・尚真の四十九日のおくやみのメニューの中に、中国から招いた料理人が「粉湯」という料理を出したと記されている。これは「汁そば」を指すらしく、まさに沖縄そばの原型であった。沖縄そばは王朝で振る舞われていた宮廷料理だったのだ。

砂川さんはこんなエピソードも話してくれた。「明治時代に本土から軍艦で沖縄に来た人たちが、本土でいう蕎麦のイメージで注文したら沖縄そばが出てきて、『何じゃこれは』とビックリしたといいます」。昔も今も「そば」の名に惑わされる本土人は多いようだ。

復活を果たした10月17日は「沖縄そばの日」

実はこの沖縄そば、本土復帰後に一時的に「沖縄そば」という名前が禁止されたことがあるという。「そば粉を一切使用していない沖縄そばは、蕎麦ではない!」という言われたそうだ。

そうは言っても、沖縄の人にとってのそばはこの「沖縄そば」。名称存続運動が展開され、昭和53年(1978)10月17日に、公正取引委員会から正式に「沖縄そば」の呼称認定を受けた。それを記念して、今も10月17日は「沖縄そばの日」となっている。

ちなみに沖縄そばの麺は、ゆでた後に食用油をまぶすのも特徴だ。「油をまぶすことで風味が増すのです。それに沖縄は亜熱帯なので、麺の持ちが良くなります」。砂川さんによると、沖縄県内には1,800~2,200の食堂があり、「どの店にも大抵沖縄そばがあります」と言う。更に、専門店に絞っても250~300店舗はあるそうで、「それぞれの味を楽しんでくださいね」とのコメントを頂いた。

路地一本入ったウチナーが通う専門店の味

そこで早速、専門店の味を確かめに行くことにした! そのお店は、牧志公設市場のすぐ近くにある「田舎」。沖縄そばの上に豚のアバラ肉をトッピングした「ソーキそば」を専門に出している。アバラならではのうま味は三枚肉とはまた違ったうまさがある。

薄暗いアーケードを通ると、見えてくるのは「田舎」。価格表を見てビックリ! 国際通りの半額近い値段だ

ただこのお店、薄暗いアーケードの一角にあるため一瞬たじろぐ。女性は入るのに勇気がいるかもしれない。お店に入ったところ、店内に掲示されたメニューは至ってシンプル。「ソーキそば」(350円)と「いなりずし」(50円)がメインだ。超絶に安い!

カウンターに座ると、テキパキと店のおばちゃんがそばを作ってくれた。トンコツだけれど透明度があり、ダシがよくきいている。中華をルーツとしているのだけれど昆布ダシもきいていて、すごく香り高い。そばひとつの中にもいろんな文化がチャンプルーされていることが実感される。

ここの麺は細口の平麺ストレート。スルスルと胃袋に収まる。ボリュームは手頃で、小腹がすいた時にちょうどいい。こういった感じでつるりと食べて、ハイまたね。というのがウチナースタイルだそうだ。

「ソーキそば」(350円)。とんこつだが透明感があり、ダシもきいている。50円の「いなりずし」とともに

ちなみに、観光客の多い「国際通り」で食べる沖縄そばは600円くらいする。しかし、上述したような路地を一本入るだけで、ウチナーの人が通うそばの店が顔を出すのだ。どこもリーズナブル、そしてうまい。名前は同じだが、沖縄ならではの素材と歴史と味わいを持つ「沖縄のそば」。チャンスがあれば是非現地で、そして路地一本入ったウチナースタイルの店で食してみてほしい。

●Information
沖縄ソーキそば 田舎
沖縄県那覇市松尾2-10-20